約20年に渡り第一線でモデルとして活躍してきた鈴木えみが、2017年に立ち上げたブランド、ラウタシー(Lautashi)。4シーズン目となる2019年春夏は、10月15日に幕を開けた「Amazon Fashion Week TOKYO 2019 S/S」のオフィシャルスケジュール内に、ブランド初の試みとしてインスタレーションでコレクションを発表する。

鈴木えみがモデルというキャリアを通じ、身にまとうことによって変化する気持ち、感じる喜びや楽しみを投影させることによって生み出されるLautashi。インスタレーションは、メディアアーティストの落合陽一と、認知科学をバックボーンに持つサウンドアーティストのKAITO SAKUMA a.k.a BATICを巻き込んで行われる。いわゆるランウェイをモデルが歩くショーではなくインスタレーションを選択したのは、Lautashiが“日常着”であり続けたいからだと語る鈴木えみ。10月18日の本番を直前に控えた今、何を感じ、考えているのだろうか。

――なぜ、インスタレーションで発表するのですか?
友人の紹介でAmazon Fashionの“AT TOKYO”プログラムにエントリーしてみないかと声をかけられたのがきっかけです。しかし、Lautashiは“日常着”をテーマとしていますので、いわゆるキャットウォークのショーというのはあまりイメージがつかず、インスタレーションでの発表という結論に至りました。

生活の中にある光や音を取り入れ、消耗品でもなく飾りでもない、実用品としてのファッションの可能性を表現したいと考えています。ブランド初めてのインスタレーションなので、Lautashiの世界観を表現し、ファッションの力というものを改めて伝えたいのと同時に、来場される方、1人1人にとって思い出に残る体験にできたらと思っています。

落合さんとは、このプログラムが決定する前から交流がありました。というのも、偶然美容師さんが一緒で(笑)。その繋がりから一度食事をする機会があり、その時に落合さんと「世の中を変えられるのはファッションだ」という話をしていて、何か一緒に取り組みをしていきたいと密かに淡い期待がありました。そして、“AT TOKYO”が決まった後に改めて正式に相談をさせていただきました。

音楽を作っていただくKAITOさんは、落合さんの推薦です。Lautashiがショーをするには、ややファッション過ぎる。なにかもう少し日常を意識した中で表現ができたらという部分で、落合さんとKAITOさんには日常らしさを感じてもらえる演出の仕掛けを考えていただいています。

最初は年齢も身長も、とにかく制限を掛けず募集をスタートしたんです。というのも、Lautashiをできるだけ色々な方に着ていただきたいなと思ったからです。これから、応募いただいた方全員分のコンポジットに目を通し、チーム全体でバランスを見つつ選定していきます。その中には50代の方や、地方で主婦をされている方、年齢や生活も様々な方々に応募いただいています。一度はモデルを諦めていたけどもう一回チャレンジしたいとか、そういう思いを持たれている方の気持ちもしっかり届いてきました。

――“AT TOKYO”という形でAmazon Fashionがデザイナーをサポートするということに対してどう思われますか?
素直に嬉しいです。スポンサーがいるわけでもなく、完全に自己資金でやっていますので、そういう機会でもないとショーは中々できないと思います。“AT TOKYO”は、一般観覧枠も設けているのですよね。今回は、なるべく多くの一般の方たちにも見てもらいたいです。ファッション業界関係者に限らず、実際に買って着用していただく方たちに体験してもらうべき、という気持ちがあります。

Amazon Fashion Week Tokyoへの参加が決まって最初の打ち合わせの際に、日本におけるファッションの優先順位は低いというお話を聞きました。これがパリなんかだとパン屋さんを始め、街中の人たちみんなが「今、ファッションウィーク中だね」と認識をしていて、そんな年齢も性別も関係なく誰もが知っている環境を東京でも作りたいという理想があると。その点でも、一般観覧枠はやはりマストだと改めて思いました。

――ブランドの目指すところは?
今回、日本の伝統工芸である京友禅の墨流し染めという技法を取り入れたテキスタイルを用いたアイテムを発表します。京都へ行き、職人さんたちととともに検証をしながら制作を行った初めての取り組みです。この職人さんたちとの制作は今後も継続し、できれば毎シーズン行っていきたいと思っています。また、テクノロジーに精通している落合さんの力を借りながら、今回のように最新技術を用いた何か、例えば生地開発などを今後一緒にできたらと、密かに企んでいます。

――鈴木えみさんが感じているファッションの可能性とは?
大きな話になりますが、例えばパリジェンヌやニューヨーカーが、=(イコール)オシャレだという認識を多くの方が持たれていますが、自分自身、仕事や旅で海外に行ったりする時に感じるのは、実際には日本人の方が平均してみんなオシャレなんじゃないかな? ということ。日本の中でも東京が特殊なのかもしれませんが、入ってくる情報量だったり、欲しいと思ったものがすぐ買えたり、クオリティーが全体的に高いと思うんです。

その一方で、与えられすぎてなんとなく選んでしまっていることも多い気がしています。例えばファッションに関心がない人でも、自分の洋服は自分で選んで毎日着ていると思うのですが、その毎日身にまとうものを選ぶという行為の意識が、原動力になるよう、その洋服がもたらしてくれる力を、もっとみんな使ったらいいのになと思うのです。一つの自分の武器のようなものに近いのかもしれないのですが、例えば、“このペンだとすっごく字が上手に書ける! ”とかそんな感覚と同じなんですけれど。この洋服を着るとちょっとプレゼンがうまくいくとか、そういうパワーみたいなものを洋服からもっと借りられると思っています。

Lautashiのコンセプトにもあるように、今までのモデルとしてのキャリアを通じてたくさんの服を着て、その度にどれだけ気持ちが変化するか、つまりどれだけ服の力を借りることができるかというのを実感しました。一着一着作っていったものを、誰かに着てもらい、その人の背中を押せるようなものを作り出していきたい、と思います。洋服をもっと色々な気持ちで、楽しく着るという意識が広がっていけば嬉しいです。

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